薄く、細く、ではあるが、確実性を備えた、メタファーについての、考察

やれやれ、僕は、一体、どこに、向かおうと、しているのだ。僕は、羊男やら、めくらやなぎやら、そしょうの知れない、おそらく、僕のすべてを、知り尽くしている、謎の女など、求めたことは、ただの、一度もないのだ。そう、僕が、求めているもの、それは、地味で、平凡ではあるけれど、静かな生活、そう、どこにでもある、何でもない、平凡な一日が、日々、継続されることを、望んでいるのだから

 

ギムナジウム学園に、入校した、女生徒たちは、彼女のことを、皆、シスターと、呼んだ。

 

朝のお祈りは、大切な儀式の、一つです。いいですか、あなた達は、今日から、この学園の生徒たち、なのです。世間に、恥じない、生活、それでいて、質素で、常に、慈しみを忘れない生徒でなければならないのです。いいですか、アンナ、あなた、襟元が、少し、乱れていますよ。前夜に、アイロンがけをするのは、教えたばかりのはずですね。それから、ナターシャ、あなた、昨夜、門限の時間を、過ぎて、いたことは、私の耳にも入っています。

とにかく、これから、あなたたちは、ここで、一つの、教理を学び、そして、卒業していくことが、責務なのです。

それから、ここでは、異性との恋愛関係は、禁止されています。もしも、そのことが、学園内に、知れた時点で、退学処分となります。

いいですか、ナターシャ、よくよく、そのことを、心にとめておくように

ある日、妻のクミコが去り、飼い猫の、ワタヤノボルも、去った。そして、僕は、世界中の人々から、そっぽをむかれているような、なんとも、居心地の悪い、気持ちになった。当時、クミコが、よく、着ていた、袖のほころんだ、グレーのカーディガンを、僕の座る、向かいの、キッチンテーブルの、椅子の背もたれに、しばらく、かけて、食事を摂ることは、とても、叡智に飛んだ、アイデアであるように、当時の僕には、思えたので、約、半年ほど、袖の、ほころんだ、グレーの、クミコのカーディガンは、僕の座る、キッチンテーブルの、向かいの椅子の、背もたれに、かけられることに、なった。

クミコが、働き、僕は、ずっと求職中だったので、食事洗濯、掃除、つまり、家事全般は、おのずと、僕の、普段の仕事と、なった。彼女は、冴えない、雑誌の、デザイン事務所に、通っていた。それでも、僕が、無職であり、自分が働いていることに対して、彼女は、不満を覚えているようには、見えなかった。むしろ、彼女にとって、そのほうが、都合の良いことのようにさえ、見えた。彼女が、袖のほころんだセーターを、着ていることに、最初に気づいたのは、彼女ではなく、僕のほうだった。時間があるときに、補修することを、それとなく、伝えたのだか、その時の、クミコの反応は、つまらない、雑誌の付録を、見つめるような、目つきで、そう、そのことについては、当時の、彼女の生きている世界では、あまりにも、どうでもいいこと、だったのだろう。結局、袖のほころんだセーターは、補修されることなく、彼女は、煙のように、僕の前から、姿を消してしまった。