【奇妙な夢】

私は、夢の中で鬱蒼と茂った森の中を一人、歩いておりました。勿論、夢の中とは、私自身気付いておりません。というか、そんなことすら考えておりません。人気のない、ひっそりとした森の中を。ある時、前方から、背丈の高い、二人組が並んで歩いて来るのに気付きました。奇妙なことに、その2人組の背丈は、ゆうに2メートルを超えています。しかも、申し合わせたように、一ミリの狂いもなく、全く同じ背丈ではありませんか。そして、顔つきからすると西洋人であることが伺えました。その瞬間、私は二人組が何故か、フランシス人であることを悟りました。何故、そう思ったのかはわかりません。ただ、フランシス人であることに間違いはないことに私は確証しておりました。私達が、血液の色は、赤いということを自然と認識しているのと同じように。私の十メートル手前で二人は立ち止まりました。そして、二人の顔つきが奇妙なのです。ふたりとも髪は、肩ぐらいまであるのですが、顔つきが男性か女性か区別ができないのです。そして、二人の両手には1羽の白い鳩を大事そうに抱えておりました。それも、全く同じサイズの真っ白な鳩です。ある時、二人はその鳩を天に向かって羽ばたかせました。同じタイミングで。右側の鳩は、天に向かって羽ばたいて行きました。しかし、左側の鳩は、左斜めに急降下し、地面に直立したのです。そして、次の瞬間、鳩は奇妙なことに、一羽の孔雀になっておりました。それも大きく羽を広げた孔雀です。ということは、雄の孔雀ですね。そこで私は、眠りから目覚めました。そんな夢を、ちょうど今から六年ほど前にみました。その時の私は、ひとつき一万五千円のボロい市営団地に独り寂しくひっそりと暮らしておりました。間取りは3LDKなので、一人で住むには十分すぎました。その時の私の生活は、勿論、無職で誰とも関わりを持たない生活をしておりました。友達はいませんし、親きょうだいとさえ会うことはありませんでした。あえて、親きょうだいには、私のすみかを教えてませんでした。そうです。絶縁していたのです。そのために、携帯も解約し、新しい携帯を買いなおしました。番号を変えて連絡がこないようにですね。その時の私は、人から連絡先を聞かれても、携帯は持っていないと嘘をついておりました。まぁ、聞かれることも滅多になかったのですが。唯一、人と話すのは、月に一回、精神病院の診察の時に主治医と一言二言会話するだけでした。そんなとき、よく独り寂しく、喫茶店森田童子の曲を聴いておりました。そして、このことは、あとからわかったことなのですが、森田童子は私の隣にいつもいたのです。私は、独りだと思っていたのですが、喫茶店の向かいの席に彼女はちゃんと座ってくれていたのです。勿論、亡霊として。彼女は、私が寝るときも出かけるときも側にいてくれていたのです。そのことを知ったのは、私が、留置所に入ったときでした。留置所の中でも彼女とよく交信しました。